左様ならば仕方がない


僕は不運だ。人生で何度そう思ったか分からない。でもね、別にそれを嫌だと思ったことはなかったんだよ。

もう何年も前のこと、卒業間際に仙蔵から言われた言葉がある。
『お前の心には刃が乗っていない。忍者には向いていないんだ、薬売りになって諸国を回ったらどうだ』
言われたときは、軽く笑って流したけれど何だかその言葉が心から離れなくて、僕は結局忍にはならずに薬売りになった。まぁ、内定が決まらなかったのもあるけど…。
そんな僕の進路を皆認めてくれて、僕は卒業してからも比較的皆と顔を合わせることが多かったと思う。特に、戦忍になった文次郎と小平太とはしょっちゅう会っていたよ。いつも傷だらけでヒヤヒヤさせられたけど、言葉を交わせば学生時代と何も変わっていなくてその度に安心していたんだ。
他の同期達?皆それぞれに活躍していたよ。長次は僕と同じように諸国を回って色々な知識を吸収していた。もう長次が知らないことなんてないんじゃないかな。仙蔵は大きな城に仕えて、今は参謀役として活躍していると思うよ。仙蔵らしいよねぇ。
留三郎にはね、なんと、お嫁さんとの間に女の子が生まれたんだよ。プロの忍を引退して奥さんを貰ったと文が届いた時は真っ先にお祝いに行ったさ。背が低くて器量がよくて、少し抜けているところもあったけど、とてもお似合いの二人だった。ずっと幸せに過ごしてほしいと願っているよ。


何故僕がこんな話をしているかと言うとね、僕はもうすぐきっと死んでしまうだろうからだ。
少し前、薬を調合している時の話なんだけど、誤って猛毒と言われている粉を吸い込んで肺に入ってしまったんだ。それ以来喀血が止まらなくて、最近では歩くこともままならない。本当僕って、不運っていうか…自分でも笑っちゃうよ。
もう皆に文は書いて渡してあるんだ。僕が死んだら読んでね、って。定期的に皆の元へ薬を届けていたから、それが途絶えたら皆怪しむだろう?僕が死んだこともすぐ分かると思うんだ。僕が伝えたいことは全部その文に書いたから、先に逝くことに別に不安はないんだよ。

ただ、


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伊作が死んだと、長次から聞いた。確かにいつも薬を届けてくれる季節になってもアイツが来ないから、おかしいとは思ってたんだが…信じられない。
伊作の手紙?読んだよ。アイツらしい手紙だった。長次がちゃんと墓を作ってくれたみたいだから、今度同期皆集まって墓参りに行く予定だ。集まるのは久々だから少し緊張するな…。なんてな、アイツらとは何だかんだでずっと繋がってると思うぜ。
伊作の手紙の内容?最後だけ全員同じこと書いてあるらしいから、そこだけ見せてやるよ。


『僕はね、皆と出会えて幸せだったんだ。
 笑うなよ?本当のことなんだから。 
 出来ることなら学園にいた頃みたいに、
 毎日くだらないことで笑い合える距離にいたい。
 けれどきっと見えないもので繋がっているから
 寂しいけれど、僕は先にいくよ。
 転生というものが本当にあるのならば
 いつかまた会おう。名残惜しいけれど。

 左様なら。               』

 

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さようなら、が、左様ならば仕方がない って意味だって知った時から書きたかったので満足!
別れを惜しむ言葉ですね〜日本語って素敵ですね〜
勢いだけで書いたので推敲してないので読みづらい部分があるかもしれませんが、ごめんなさいいい
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